25歳、社長、世界一周。

8年前、高校3年生の夏に名古屋と沖縄を自転車で駆け抜けた青春の旅日記『18歳、ホームレス。』の続編ということにしておいてください。
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2012/1/12

今日はせっかく早起きをしたので、宿の向かいのレストランへ朝食をとりに行った。ここの店員の女の子はみんな愛想がいい。すると、ここのオーナーらしき親父が近付いてきて、日本人か?と聞いてきた。相当日本人を扱い慣れているといった風で、しばらくお互いの事について話していると、「おれもそのマッサージとやらを受けてみたい。河のボートに乗せてやるから、そして、店のビールを3杯飲ませてやるから、1時間マッサージしてくれ」といってくる。

どうにも諦めの悪そうな親父だったので、オーケーオーケーと答えた。すると、今日の夕方4時にもう一度ここへ来い、と言う。とてつもなくめんどくさい約束をしてしまったもんだと全身が急にだるくなり、なんとなくその店でくつろぐのも嫌になって、宿へ戻った。そして、せっかく早起きしたにも関わらず二度寝。

再び起きると、もう昼の2時であった。特別夜更かしをしているわけでも、疲れを溜め込んでいるわけでも無かろうに、どうしてぼくはこんなに寝れてしまうのだろう。ふと、今日もレンタサイクルを借りていたことを思い出して、なんとなく重い身体を起こして外へ出た。その身体は、横たわっている仏像で有名なロカヤス寺に向かった。くねくねと曲がった道でなかなか思った方角に進めず、ときどき停まっては現地の人に尋ねたり、地図を確認して、ようやくその場所に辿り着いた。合間の屋台で食べる簡単な麺類やミネラルウォーターがとてつもなく美味しい。

さすがに有名なお寺だけあって、観光バス用の駐車場やお土産屋まで揃っている。だが、人気(ひとけ)はまばらで、騒がしい若い男女5人組の韓国人の声もあっという間に草むらにかき消されてしまう。横たわる仏像に寄り添うかのように、傍で昼寝をしている野良犬が可愛らしい。花売りの老婆が、観光客が到着するたびにすり寄るのだが、その誰にも相手にされず、呆然と立ち尽くしている。

仏像をひとたび目にして感嘆の声をあげるなり、記念写真を撮ってはすぐ去ってゆく観光客の往来をぼんやり眺めていたら、ふと、そろそろ夕陽をみる場所を探しに行かなければいけないことを悟り、ロカヤス寺を後にする。来た道とは違う道で、なにか塔のような、小高い所に登ることができて、かつ誰からも相手にされていないような秘密基地を求めて、ふらふらと自転車を漕ぎ始めた。

すると、まさに塔のような突起が、お城のような要塞から顔を出し、その頂上に向かってぼろぼろの階段が真っ直ぐ伸びている遺跡を見つけた。その入り口に自転車を停めてお城の中に入ると、短い階段を登ったり降りたりして、おまけにがっしりとした門をくぐり抜けた後に、その塔は建っていた。塔の周りを一周してみると、頂上へ伸びる階段は四方に存在した。ぼくは迷わず西向きの、手すりのない階段をそろりと頂上まで登った。塔の頂上がモスクのような半円形をしているのがかっこいい。一番上の段に腰掛けると、遠くには遺跡群の向こうに流れる河まで見渡すことができる。

どの方角を眺めてもそこら中にちらばった遺跡を眺めていると、改めて、これらの遺跡群がかつては一つの街を形成していたのだ、ということをイメージすることができる。それを鮮明にイメージすることができるのは、どの遺跡も朽ち果て具合が同じだからであって、ある遺跡はものすごく古いが、ある遺跡は復元されてピカピカだとかいう不自然なムラが無いからだろう。

あいにくこの日は雲が多く、いつ陽が落ちたのかすらわからないほどであったが、だんだんとオレンジに染まってゆく雲が幻想的で、ここから見える全てのレンガ遺跡が時間と共に色を変えてゆくのはたまらなく素敵だった。ぼくは、今回旅の至る所で奥田民生の「夕陽が丘のサンセット」を聴いているが、曲を流すと真っ先に思い出すのは、この、レンガの冷たい感覚が尻に伝う、秘密の塔の、真西向きの階段の最上段で、夕陽を眺めている映像だ。だが、遺跡の名前は未だに知らないし、この遺跡が市街のどこに位置していたかもまるで思い出せない。

この曲の歌詞には、「丘に夕陽が沈んでゆくのを 丘の上で見たらどう見えるの?」とある。これはぼくの生きてゆく上のテーマである「一生勉強 一生青春」をとてもわかりやすく表したフレーズだ。小さな頃にいつも頭に片隅にあった重大な問題を、ぼくはいつまでも忘れたくない。

いつのまにかそれよりも放っておけない問題が眼前に立ちはだかって、そんなことを考えている暇があるなら、定時に出勤したり、免許証の更新をしたり、上や下に気を遣ったり、婚礼祝いの準備をしたり、Yシャツをクリーニングに出さなければいけなくなった。あの時の問題は、それほど重大ではなかったんだと思わざるを得なくなった。

重大ではなかったことにしてしまうことはいつでもできる。でも、ぼくは、もう少し自由を得るために最低限の責任感と戦おうと思う。こうして、小さい頃から身体の中に宿っている好奇心の炎を絶やさないでやろうと思う。地平線の向こうは何が見えるんだろう、あの島には誰が住んでるんだろう、虹の根っこはどこにあるんだろう、雨と晴れの境界線はどうなってるのかな、この土を掘り続けたら地球の裏側に辿り着けるかな。

と、そんなことをぼんやり考えていたら、レストランの親父との約束はとっくに忘れてしまっていた。すっかり夕闇になるまでその場所を離れなかったぼくは、ついにこの日、自力で宿に帰れなくなってしまった。おまけに野良犬の遠吠えが聞こえてきて、一気に心細くなってしまった。ふらふらと自転車を進めてはみるものの、やはり方向音痴の嗅覚は相当勘が鈍く、どんどん中心地から離れて行くようだった。近くに薬局に寄って道を尋ねると、自転車で戻るなんてとんでもない、と驚かれてしまった。結局、店内で処方箋を待っていた兄ちゃんのトラックに自転車を載せてもらい、安宿街まで乗せてもらったのだ。この時、人との関わりはやっぱり楽しいな、と感じ、またヒッチハイクの旅をしたいな、などと図々しいことを考えてしまうのであった。兄ちゃんには深々と頭を下げ、Facebookのアカウント名を交換して、別れを告げた。

その夜は、さすがに約束をすっぽかした親父のいるレストランには行けず、宿の近くにあった屋台で軽く飯を食って、ぐっすり寝た。



Posted by 中村浩希 at 2012年02月11日   18:10
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この記事へのコメント
フィンランドで夕日眺めてて迷子になって、凍死しないようにね(´・_・`)
Posted by かおる at 2012年02月11日 22:25
遺跡の高台から見えた景色を写真で見せてね(*´ω`*)
地図にも載ってないような地元の人ですらあまりしれてないような場所を見つけるのって贅沢だな♫けど、それゎ日のある時までだけどwww
どんな表情して写真撮ったりしてるんだろ(*・Θ・*).。Oo
1人行動だし分からない部分だから気になる(○´艸`)
わたしなら独り言言ってニヤニヤしてそうwww
Posted by さおり at 2012年02月13日 02:30
かおるさん
大丈夫だと思うけどねえ。。でも記念に全裸になってみたいとは思うね、美しい港町ヘルシンキで◎
Posted by 中村浩希中村浩希 at 2012年02月14日 04:07
さおりちゃん
遺跡の高台ねえ、なかなか写真では伝わらんみたいだわー。曇ってたし普通のデジカメだからね!でもあの遺跡はなんて名前の場所だったんだろーなー。
Posted by 中村浩希中村浩希 at 2012年02月14日 04:09
みたよー
南ヨーロッパはジプシーに注意ってよく言われる。
また情報教えてね
Posted by みきお at 2012年02月24日 01:44
>幹朗君。なるほどなるほど、今ジプシーのこと調べました。まさに南ヨーロッパはこれから回るところなので気をつけます。ありがとうございます!
Posted by 中村浩希中村浩希 at 2012年02月26日 22:36
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